父から贈られた言葉(1月21日)
21日午後、知事公邸の本棚で、14歳の誕生祝いに、両親から贈られた本を見つけて、見開きに書かれた父の言葉を、懐かしく読み返しました。
これは、カール・ヒルティという、父が生涯尊敬していたスイスの哲学者の伝記で、14歳の誕生日のお祝いに、両親から贈られたものでした。
表紙を開けると見開きの部分に、「昭和三十六年一月十二日、大二郎様、満十四歳の誕生日をお祝いします」で始まる、父からの贈る言葉が、万年筆の細かい字で書き込まれています。
「甘えたければ甘えてもよいけれど、お父さんもお母さんも、大二郎はこれでもう、大人になったんだと思っています」といった前振りに続いて、父が高校時代に、ヒルティの思想と哲学に出会った経緯が綴られています。
「私が、何よりもヒルティを尊敬するのは、彼が、この難しい少しも思うようにならない現世において、いかなる時にも、少しもニヒリスティックな気持ちを見せなかったことです」という言葉からも、父のヒルティへの思いが伝わります。
カール・ヒルティは、ベルン大学の学長を務めた、学者でもあり教育者でもある人ですが、1890年、57歳の時に、郷土から押されて下院議員になると、現実の政治に嫌悪感を示しながらも、亡くなるまでの約20年間、議員としての職責を果たしたという人物です。
また、若い学生達には読書の大切さを説いた人で、この伝記の中にも、「人生の半ばまでに、古今東西の文学の名作をすべて読み終えることを、すぐ計画しなければなりません」という、ヒルティが、大学の新入生に語った言葉が紹介されています。
さらに、父の言葉を読み返す中で、今さらながらすごいと思ったのは、祖父の卯太郎の話でした。
「死ぬ一両年前から、中国語とフランス語の勉強を始め、肝硬変癌で自分でも死期を自覚し、死ぬ一週間くらい前には、全身黄疸で痛々しいほどお腹に水がたまって、大変苦しかったにもかかわらず、いよいよ意識が不明になるまでは、ラジオのテキストを手にしてスイッチをいれて、苦痛に顔をゆがめながら放送を聞いて、勉強を続けました」とあります。
「大二郎も沢山の書物を読んで下さい。個人として生活するためにも、世のため国のため奉仕するためにも、学問は大切です、思想は大切です、理想は大切です」という父の言葉を、どれだけ守って来られたかと思うと、父に対して申し訳ない気がしました。
父からの贈る言葉の最後は、「大二郎が、これから四十一年たって、お父さんの今の年と同じになって読んだら、また違った感じがするでせう」と、締めくくられています。
ちょうど、10日近く前に、60歳の還暦を迎えたばかりで、父の言う41年後を5年過ぎていますが、今この本が出てきたということは、もう一度勉強を始めろという、父の教えだと受けとめました。
