蚊に刺される喜び(6月27日)
27日は、県中部の香南市野市町にある、特別養護老人ホームや療養病床などを視察しましたが、その中で、様々な人生に出会うことが出来ました。
午前中に訪問をした特別養護老人ホームは、ユニットケアという、一人一部屋のゆとりのある作りで、計画の段階から、関わってきた経緯があります。
ところが、開所式の日が別の仕事と重なって、出席出来なかったため、この日改めて、ホームの中を見せてもらうことになりました。
入所しているお年寄りの中には、認知症の進んだ方も大勢いますが、「こんにちは」と声をかけて、話を交わす中では、ほとんどそれを感じさせません。
さらに、以前入所していた施設では、問題行動を起こすなど、周りを手こずらせたお年寄りもいるそうですが、そんな苛立った雰囲気も感じられません。
一緒に回って下さった理事長は、「県外で、ユニットケアの先進事例を視察した時には、入所者に対する効果の説明を聞きながら、そんなにうまくいくものかと、半信半疑だったんですよ」と、正直な思いを振り返られます。
けれど、「この結果を見ると、一人一部屋で、どの部屋からも中庭が眺められるという環境が、明らかに良い効果をもたらしているとしか思えない」というのが、中間総括の言葉でした。
その中で、何人ものお年寄りと言葉を交わしましたが、阪神淡路の大震災をきっかけに、高知に戻ったという女性は、自室のベッドに横たわったまま、僕の髪を眺めて、「めっきり年がいきましたねえ」と、優しく声をかけてくれました。
食堂に出てこれるお年寄りと、昼食を共にした後、このホームの向かいにある、同じ理事長が運営する病院の、療養病床を見せてもらいました。
症状の重い患者さんを引き受けているという、その病床には、膝や腕が曲がって固まったまま、鼻と口に管を通されたお年寄りが何人もおられて、道路一つ隔てた先ほどのホームと比べると、使ってはいけないような言葉が頭をよぎりました。
下に降りて、各種の物理療法を行う、物量内科の部屋をのぞきますと、ベッドに横たわって治療を受けている男性がいます。
聞けば、脳梗塞を患って入院をしたものの、症状が固定化したことを理由に退院を余儀なくされて以来、リハビリも十分でないまま、自宅で療養を続けていたと言われます。
ところが、この病院に物量内科が出来たことを知って、何度か訪れるうちに、まったく不随だった左の腕が、少し動く感じになってきました。
このため、最近のこと、暑い日差しの中を自宅の庭先で、二の腕をさらして、畑仕事の真似事をしていたところ、左の腕にちくっと痛みが走りました。
見ると、腕に蚊がとまっていたのですが、しばらく前まで完全に麻痺していた腕に、感覚が戻ってきたことを実感して、たまらなく嬉しかったそうです。
ユニットケアのホームから療養病床へ、そして、脳梗塞の後遺症と闘う男性と、数多くの人生に触れる中で、学ぶことの多い半日でした。
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