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2008/11/08

「この国はガン」(11月8日)

 8日昼、土曜の休みを使って、メーリングリストに書き込みをしているうちに、昨日亡くなった筑紫哲也さんが最後に収録をした、ネット上の「多事争論」の中にある、「この国はガンにかかっている」という言葉が、頭の中で重なり合いました。

 私の入っているあるメーリングリストに、先日、高知県の海岸線の砂浜が無くなっていったのは、ダムが出来て砂利が流れてこなくなったこともあるが、それよりも、防波堤と作ったことが影響しているのではないか、との意見が寄せられました。

 私には、防波堤の建設が、どれだけ影響したかはわかりませんが、砂浜が無くなる話に関連して、知事時代に経験したことを書き込もうと思いました。

 それはもう何年も前のことですが、県の東部の海岸線で、下から海水に浸食された堤防が、地盤がえぐられて倒れるという出来事がありました。

 早速、現地の視察に出かけて、海岸線の近くに住む住民の話を聞きますと、堤防の外側に作られた、波消しのブロックでは十分でないので、さらに沖合に、離岸堤と呼ばれる、海の中の波よけ堤防を作ってほしいという、陳情が出てきました。

 そこで、この地域で行われた過去の事業と、災害との関わりを調べてみました。

 そうしますと、この地区の海岸線には、かつては砂浜があって、それが、波を消し災害の被害を弱める役割を果たしていました。

 ところが、その地区の東側にある、漁港の整備が進んだ後は、東の方から砂が流れてこなくなって、砂浜はどんどん細っていきました。

 このため、海岸線に防波堤を作ったのですが、風の強い時には波が越えてくるため、防波堤近くの海の中に、波消し用のブロックを積み重ねました。

 しかし、砂浜がまったくなくなった結果、段々と堤防の下から海水がしみ込んで、ついに堤防が倒れたというわけです。

 詳しい数字は忘れましたが、漁港の整備には100億単位、堤防を作りテトラブロックを置くのにも、何億というお金がかかっています。

 堤防を作り直して、さらにその上、沖合に離岸堤を敷設するとなりますと、また、相当な事業費がかさむことになります。

 それでは、これらの事業によって守られる世帯数はというと、あまり多い数ではありませんので、新たに海岸線をコンクリート漬けにしていくよりも、1世帯ごとに補償金を差し上げて、住宅を移転新築していただく方が、はるかに、全ての人にとって、ハッピーではないかと考えたくらいでした。

 このように、日本の海岸線は、水産庁、旧建設省、旧運輸省、それに農林水産省が、それぞれの権限と権益を持っていますので、次々とコンクリート事業を展開しては、次なる事業の必要性を作りだしている側面があります。

 これと同じようなことは、旧建設省が作ったダムの湖底にヘドロがたまって、水位が高くなった結果(といっても、役所は因果関係を否定しますが)、山にしみ込む水圧が高くなって、地すべりの危険が高まったと、今度は農林水産省が、数100億単位の莫大な予算で、地すべり事業に取りかかるなど、いくつも例が挙げられます。

 といったことが、メーリングリストに書き込んだ内容なのですが、筑紫さんの訃報を受けて、ウェブサイトの「多事争論」を開きますと、8月1日に収録をした最後の「多事争論」を、動画で見ることができました。

 NEWS23時代の90秒の「多事争論」は、テレビとしては破格の長さだったが、筑紫さんにとっては短すぎて、いつも言葉足らずで着地失敗に終わった、といった切り出しで話は始まります。

 内容は、この国は、ご自身と同じくガンにかかっているというもので、ガンにかかると、本来使うべき栄養やエネルギーが、ガンと戦うことに使われてしまって、人間が生きていくために必要なところに、使われなくなると指摘されます。

 それと同じく日本も、ガンと戦うことに栄養とエネルギーが使われてしまう結果、教育という未来にも、高齢者医療という過去にも投資をしないまま、政治が本来果たすべき世代間の配分に、明確な判断を下せない国になっているというのが、筑紫さんの、動画上では最後のメッセージでした。

 ここで筑紫さんが、この国のガンの一つとして挙げていたのは、向こう10年間に、さらに59兆円を、道路整備に使うと言っているといった点でしたが、自分が知事時代に経験をした、公共事業の負の連鎖を思い起こしますと、どうにかしないとという思いが強くなります。

 ただ、筑紫さんは、このビデオの最後に、「この病気と闘っていると敵はしぶとい。この国の問題も、ある意味単純だが、やれることが単純かというとそうではない」と、私たちに釘をさすことを忘れていませんでした。

 筑紫さんのご冥福を、心からお祈りいたします。

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