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2009/06/15

「警察への取材で」(6月8日)

 8日、テレビのニュースを見ていて、最近気になっ
ている表現が、あらためて気になりました。

 それは、事件や事故に関するニュースで、「・・・
が、警察への取材でわかりました」という表現です。

 20年間、NHKの記者として、事件や事故の取材
に関わっていた当時もそうでしたが、最近まで、この
手の原稿では、「・・・が、警察の調べでわかりまし
た」と表現されていました。

 ところが、いつからか、「警察の調べで」という、
警察を主体にした表現が、「警察への取材で」と、取
材をするマスコミの側を、主体にする表現に変わりま
した。

 確かに、警察の幹部などへの、記者の独自取材の結
果を、「警察の調べで」と表現すると、そのニュース
を見ている人の中には、警察がそのことを、公式に発
表したと受け取る人もいるでしょう。

 そうした誤解を避けるための、言い換えかとも思い
ましたが、どんな事情があっていつからという、疑問
は解けないままでした。

 それで思い出すのが、ロッキード事件で、有力な政
治家が逮捕されたのを機会に行われた、被疑者らの呼
び方の変更です。

 当時のテレビニュースや新聞の記事では、警察や検
察に逮捕された人、起訴されて裁判にかかる人は、す
べて呼称はなく、呼びつけにされていました。

 これは、日本では、逮捕されて起訴されれば、90
パーセント以上が有罪になるという事情が、背景にあ
ったからですが、呼びつけの表現に対して、一般の視
聴者から、人権上問題があると、指摘されたことはほ
とんどありませんでした。

 ところが、ロッキード事件で、元首相や元大臣が次
々と逮捕された頃から、にわかに、逮捕されただけで
呼びつけにするのは、人権侵害ではないかとの声が社
内(NHK内という意味です)に起きて、被疑者など
の呼称を、検討する委員会が立ち上がりました。

 その結果生み出されたのが、今ではすっかり耳に慣
れた、逮捕されれば「容疑者」、起訴をされれば「被
告」といった呼び方で、慣れるまでは、かなり違和感
を覚えたものです。

 もちろん、国によっては人権上の配慮から、逮捕の
段階では、被疑者の名前を表に出さない国もあります
から、あの当時、わが国のマスコミが、容疑者や被告
といった呼称を使い始めたのも、当然の変化だったの
だと思います。

 ただ、その背景に、ロッキード事件という、政治が
らみのにおいが漂っていたことを思い出すと、「警察
への取材で」の背景にも、何かあるのかなと疑いたく
なってしまいました。

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