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2011/02/05

マンガ論争

 取材を受けたことのある、ライターの方から、成人
向けのマンガを規制する目的で、昨年暮れに改正され
た、東京都の青少年条例に関する資料を、送っていた
だいたのをきっかけに、この問題について考えてみま
した。

 過激な性表現を含んだマンガの中には、「こんなも
のを、自分の子供に見せられるのか」という問いに、
うなずかざるを得ないものも数多くあります。

 また、それらのマンガが書店に並ぶ時には、一般の
書籍とは、棚をはっきりと分けるべきだという人が、
ほとんどだろうと思います。

 では、そうした規制がなかったのかと言えば、そう
ではなくて、18歳未満には売らないようにと、販売
の棚を分けるゾーニングや、少年少女には読んでほし
くない、グレーゾーンのものにもシールを張るといっ
た、自主規制が行われてきました。

 問題は、ゾーニングが徹底していない書店をどうす
るかや、過激な描写があるのに、成年マークがついて
いない作品をどうするかですが、それらのことには、
従来の条例にある「不健全図書」の規定と、業界の自
主規制で、十分に対応できたと思います。
 
 一方で、こうしたマンガが、引き金になったと言わ
れるような事件も、聞いたことがありません。

 そうした状況の中で、あえて条例を改正するには、
それ相応の理由が必要ですし、そのことが理解できる
ような条文であるべきですが、改正された条文は、条
例の割には、とても曖昧なものです。
 
 また、条例の改正にあたって、都内のPTAを対象
に行った説明会で、都の担当者が、幼ない女の子の写
真や、いわゆる18禁のコミックを見せて、こうした
ものが、「ドラえもん」などと同じ棚に並べられてい
ると説明した言われますが、事実と反することで、お
かしな話だと思います。

 その上、この問題の担当責任者が、都議会での答弁
で、「小説は読む人によって様々な理解がある、マン
ガやアニメは、誰が見ても読んでも同じで、一つの
理解しかできない」と答弁したと聞くと、マンガをま
ったく知らない人が、一方的な思い入れで、条例改正
に突っ走ったのかと思えてきます。

 ですから、もしかすると、特段の底意はないのかも
しれませんが、こうした表現の自由に関わる規制は、
それが独り歩きを始めますと、取り締まりの側が、気
に食わない相手に、幅広く網をかけるための、道具に
も使われかねない危険があります。

 ただ、一方で、冒頭にあげた、「こんなものを、自
分の子供に見せられるのか」に代表される、ごく一般
的な受けとめに対して、憲法上の表現の自由を振りか
ざしても、その声が届くものではありません。

 それだけに、条例の改正が必要だと考えた側と、疑
問があると考えた側から、それぞれ、良識的な議論の
出来る人が集って、自主規制の現状はどうか、また、
いわばアウトサイダーと呼ぶべき人たちを取り締まる
ために、文化や表現の自由の領域に、踏み込む必要が
あるのかどうかを、議論する場を作ってはどうかとい
うのが、自分の率直な感想です。

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