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2011/08/03

北京報告(3)・・・戦略の石

 レアアースを始め、鉱物資源をめぐる国際的な現状
と、中国の経済戦略との関わりを考えてみました。

 このところ、鉱物資源の国際価格は、軒並み値上が
りを続けています。

 例えば、石炭を蒸し焼きして作る、コークスの価格
は、2~3年前には、1トン当たり100ドルでした
が、現在は6倍の600ドルになっていますので、高
炉の燃料としてコークスが欠かせない、鉄鋼などの産
業は、大変厳しい状況になっています。

 また、銅も資源が減ってきていて、日本の企業が南
米のチリに、2013年に開業する銅山は、採掘口の
高さが4800メートルと、富士山よりも高い場所に
あります。

 このため、初期投資も半端な額ではありませんし、
何よりも、採掘現場まで水を汲み上げるのがひと苦労
ですが、それでも事業として成り立つほどの、価格に
なってきています。

 同様に、手に入りにくくなっている鉱物資源に、セ
リウム、ランタン、プラセオジウムなどの、いわゆる
レアアースがありますが、こちらは、ご存知のように
別の理由があります。

 それは、主な産出国である中国が、輸出を規制して
いるからで、僕が参加した経済団体の訪問団が、温家
宝首相と会った時にも、レアアースのことが、大きな
話題になりました。

 もともと地質学が専門の温家宝首相は、自信ありげ
に、これは、採掘現場での環境保全のために、生産を
調整しているだけで、外国企業への、経済的な影響を
目論んだものではないと強調します。

 しかし、その説明を、そのまま素直に受け取る人は
少ないでしょう。

 僕も、その後、中国政府の経済計画の担当者から、
今年度から始まった、第12次5ヶ年計画の内容を聞
く中で、そうかと思うことがありました。

 それは、レアアースの問題が、新しい5ヶ年計画を
実現するための、戦略に関わっているのではないかと
いうことで、これまでの中国は、人件費の安さと資源
の豊富さ、それに、国内マーケットの大きさという、
持てる素材を原動力に、経済を伸ばしてきました。

 ただ、素材頼りのままでは、今後の成長が望めませ
んので、第12次の5ヶ年計画では、「生産サービス
の分野での、対外開放を進める」という表現で、付加
価値の高い経済への転換を目指しています。

 とはいえ、現在の中国企業が、そのためのイノベー
ションを、自らの力で実現出来るかと言えば、それは
難しいことです。

 となれば、その技術を手に入れるため、外国から、
付加価値の高い技術を持った産業を、中国の国内に引
き込むのが、一番の近道ということになります。

 そこで、レアアースの輸出を規制した上で、中国国
内に立地をすれば、国内企業と同じ扱いでレアアース
を使えますという条件を、呼び水とすることが、国内
産業を高度化するための、一つの戦略に、なっていは
しないかと感じられたのです。

 戦略という言葉は、「戦」いを「略」すと書きます
が、レアアースやコークスという石を使って、日本の
企業との戦いを略してしまおうという、中国流の兵法
にどう立ち向かうのか、わが国にも戦略が求められて
います。

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