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2011/09/02

人気の秘密

 信州に滞在していた間に、美術関係の仕事をされて
いる方のお宅を訪ねて、あれこれと、画壇の話題をう
かがいました。

 その中で、今も大変な人気だと話題になったのは、
没後25年を過ぎた鴨居玲です。

 僕にとっては、ご本人よりも、下着デザイナーだっ
たお姉さまの、洋子さんの方がなじみがありますが、
鴨居玲と言えば、人間の内面を見つめた、独特の画風
で知られています。

 もともとは、生まれ育った金沢の美術専門学校で師
事した、宮本三郎の影響を受けていましたが、40歳
の時に、若手の洋画家の登竜門とされる、昭和会賞と
安井賞を受賞したのをきっかけに、自分流の絵を描く
ようになります。

 その意味では、自宅で急逝した57歳までの、わず
か17年間が、独自の鴨居玲を創りあげた期間という
ことになります。

 ところが、亡くなってから何年が経っても、彼の人
気は衰えることがありません。

 この家のご主人によると、梅原龍三郎でも安井曽太
郎でも、没後何十年というタイミングで回顧展を開い
たら、後はしばらくはないけれど、鴨居玲の場合は、
5年ごとに回顧展が開催されているといいます。

 しばらく前の話ですが、この方が、ある地方で美術
に関する講演をされた時、梅原の話をしても、会場は
あまり盛り上がらないのに、鴨居の話になると会場の
反応が変わりました。

 講演の後、中年の女性が、「鴨居玲が大好きなんで
す」と話しかけてきますので、失礼ながらこんなおば
様までと、感心させられたそうです。

 こうしたことから、4年後の没後30年の回顧展に
も、すでに全国の4つの美術館が、手をあげていると
のことで、鴨居玲の人気は、当分衰える兆しがありま
せん。

 明るさと暗さに分ければ、自殺などをテーマにした
暗い絵の画家ですが、時代の流れそのものに不安を感
じる人が多い中、鴨居の絵が受けるのではないかとの
結論になりました。

 後日、スタジオ・ジブリを取り上げた、テレビの番
組を見ていますと、宮崎駿さんが、「みんなが浮かれ
ていた時に危ないぞと言えば、ファンタジーになる、
それが、風の谷のナウシカだった。しかし、みんなが
駄目だと思っている時代に、何を作ればいいか、ファ
ンタジーが難しい時代になっている」と、語られてい
ました。

 それを聞いていて、逆の意味で、鴨居玲が描く、暗
いファンタジーの人気と、相通じるものがあるのかな
と思いました。 

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