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2012/03/27

私家版にほん昔話

 このブログにも、ちょくちょく登場する妻の母が、
この3月で、満89歳の誕生日を迎えましたので、宮
崎の母の家で、ささやかなお祝いをしました。

 お年寄りには、全般的にその傾向がありますが、宮
崎の義母も、直近の出来事はすぐに忘れてしまいます
から、今日は何日だったかねといった問いかけを、何
度も繰り返したりします。

 これに対して、娘である妻が、「さっきも言ったが
ね」と答えると、「しょうがないわね、忘れるんだか
ら、聞いた話はその場その場よ」といった調子で、こ
りた様子もありません。

 以前にも、部屋でうとうとしていた妻に、義母が、
「ねえねえ」と話しかけていますので、何だろうと思
って聞いていますと、「わたしゃあ、いったい何人子
供を産んだんかねえ」という、目の覚めるような質問
が繰り出されます。

 せっかくのまどろみを邪魔された妻は、「そんなこ
とは、自分で考えない(考えなさい)」と、ふて寝を
決め込みましたが、こんなやり取りもしばしばです。

 ところが、これが昔話となると、打って変って記憶
のひだが活動を開始します。

 例えば、義母は現在の都城(みやこのじょう)市、
当時の西岳(にしだけ)村の生まれですが、80年前
の小学校時代に、授業を終えての下校の途中、知り合
いのおじちゃんが運転するバスが通ると、停留所でも
ないのにバスを止めて、家の近くまで送ってくれたと
いった思い出話が、湯水のように湧き出てきます。

 義母の記憶では、誕生日も、実際には2月の何日か
なのだそうですが、何かついでのある時に、役場に届
け出ればいいだろうと放っておかれたため、戸籍上の
誕生日は、3月14日になったとのことでした。

 今年、その誕生日を迎えれば満で89歳、昔なら数
えの90歳になりますので、ささやかなお祝いをする
ために、妻とともに宮崎へ向かいました。

 お祝いの晩餐は、日頃からお世話になっている、妻
の従姉夫婦を呼んで、誕生日の2日前に済ませたので
すが、誕生日当日の朝、妻と二人台所にいますと、義
母の部屋から何やら話声が聞こえます。

 電話でもしているのかと思って、部屋をのぞいてび
っくり仰天、そこにいたのは、ある理由があって長い
間、義母との縁が切れていた女性でした。

 聞けば、今さら受けいれてもらえるだろうかと、恐
る恐る庭から顔を出したところ、お母さんが喜んでく
れたので、部屋に上がり込んだと言います。

 今は県外にいる彼女は、宮崎にいる娘さんを訪ねて
来たとのことでしたが、予想もしない来訪者に、義母
も、彼女の手を握って大層な喜びようです。

 久し振りに積もり積もった話をしながら、それにし
ても、よく母の誕生日を覚えていましたねと水を向け
ますと、「え~っ、お誕生日でしたっけ」との答えが
返ってきました。

 よく聞くと、さすがに誕生日まで覚えていたわけで
はなくて、数年ぶりの訪問が誕生日だったのは、まっ
たくの偶然だと言うのですが、それにしてもすごい偶
然があるものだと、一層話が盛り上がりました。

 にっぽん昔話ならば、恩返しに来た鶴が、人間の女
性のなりをして訪れたような場面ですが、義母の喜び
ようを見ていますと、昔話を聞くような、ほのぼのと
した思いに駆られました。

 私家版にほん昔話の主人公、89歳を迎えた「おう
な」の長寿を祈っています。

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