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2012/04/30

集まり散じて人は変われど

 共産党政権の下での中国を見ていますと、人材の育
成と国の統治を結びつける、これまでの世界の歴史に
はなかった、独自のモデルに感心させられます。

 4月の下旬に、日中の経済交流を進めてきた団体の
一員として、3泊4日で北京を訪問しました。

 中国は、訪れるたびに、新しい発見と再認識を繰り
返す国ですが、政権交代を目前に控えた時期に訪れま
すと、中国共産党による人材育成と国の統治との関わ
りは、実に良く出来た政治モデルだと、改めて感じ入
ります。

 といって、新しい話でも何でもないですが、一党独
裁を果たしている中国共産党の党員は、若いうちから
全国に配置されて、それぞれの地域での仕事ぶりをも
とに、ふるい落とされていきます。

 そのふるいにかかって残った人たちが、さらに重要
な地位につけられて、その組織経営の手腕や判断力、
さらには、いったん事あった時の豪胆さなどを試され
ていきます。

 こうして最後まで残ったエリートの中から、共産党
の執行部である、16人の中央政治局員が、さらには
9人の政治局の常務委員が選ばれて、そこから、国家
主席と国務院総理が選出されます。

 このシステムの強味の一つは、上から下まで、公式
見解が全て統一されていることで、国としては、外向
けの強さにつながりますし、個人にとっては、余計な
考えをめぐらす必要がないという利点があります。

 そういうと、皮肉のように聞こえますが、決してそ
うではなくて、自分の経験からも、公式見解をオウム
返しに答えるフォーマットがあれば、個人個人の知恵
と能力を、かなり有効に使えると思うのですす。

 次に、この人材育成システムのすぐれている点は、
13億の国民の中で、特に優れた力を持っていると思
われる人が、国のトップに出てくることです。

 温家宝首相が議長を務めた、アセアン・プラス・ス
リーの会議を傍聴した方が、専門分野ではない国際金
融や経済の話を、すらすらとメモしながら、後ろの役
人のアドバイスを受けることもなく、的確に議事を進
めていく温首相のさばきの良さを見て、感心させられ
たと言っていましたが、どんな分野の話題にも、対応
できる力を備えているのではないかと思います。

 また、これは別の能力ですが、胡錦涛主席は、フォ
トグラフィック・メモリーの持ち主と言われていて、
一度見た書類の内容を、まるで写真に撮ったかのよう
に、頭の中に焼きつけて、記憶する力を持っていると
言われます。

 胡錦涛主席と会談した、当時の菅首相が、手に書類
を持って、それを読みながら話しているのを見て、愕
然としたものですが、胡錦涛主席のこの話を聞くと、
もはや相手にならないという寂寥感にかられます。

 さて、この人材育成システムの、もう一つ優れた点
は、5年10年を単位に、優秀な人材が次々と交代し
ていくことです。

 何が言いたいかというと、現代の中国は、共産党王
朝が支配する独裁国家ですが、従来の独裁国家とは違
って、個人やその家族の独裁が、歴代続いていくモデ
ルではありません。

 このため、当代の主席を排除したとしても、独裁が
崩壊するわけではありませんし、共産党に代わる有力
な、というのは、13億の民を統治する能力を持った
という意味ですが、有力な組織やグループが、すぐに
とって代われるわけでもありません。

 ですから、いかに中国版のツイッター「微博(ウェ
イボ)」などソーシャル・ネットワーク・サービスが
普及したとしても、昨年中東で話題になった、ジャス
ミン革命のような政治変動は、起きにくいと考えた方
がよさそうです。

 こう考えてみると、地方から叩き上げる人材の育成
と、その循環システムを原動力にした統治機構は、こ
れまでの世界の歴史にはなかった、実に巧みで強靭な
統治モデルではないかと、改めて再認識させられまし
た。
 
 今お世話になっている早稲田大学の校歌に、「集ま
り散じて人は変われど、仰ぐは同じき 理想の光」と
いうフレーズがありますが、まさに、中国共産党モデ
ルの強さは、これではないかと感じました。

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