時代を映すかがみ
高知の友人から、アメリカ生まれで、最近東京に進
出したドーナツを食べてみたいので、送ってほしいと
の依頼がきました。
調べてみますと、有楽町の駅前にできた、「イトシ
ア」という複合施設の1階に入っていることがわかり
ましたので、妻を連れだって出かけてみました。
店の場所は、すぐにわかりましたが、案の定長い列
ができていますので、待つ間に、20種類のドーナツ
が一つずつ入ったセットを、送ってあげることに決め
ました。
その時は、気が付かなかったのですが、妻が支払い
をしている間に店の外に出ますと、狭い通路を隔てた
向かい側の店で、女性の店員さんが、大きな声で呼び
込みをしています。
見ると、そちらはケーキ屋さんで、おいしそうなケ
ーキが並んでいるのですが、ドーナツ屋さんにお客を
取られてか、店先には閑古鳥が鳴いています。
何とも切ない気持ちになりましたが、店をのぞくの
も気が引ける気がして、店員さんとは目を合わせない
まま、店の前を通り過ぎてしまいました。
そこで、その時感じた、お向かい同士の明暗の情景
を、ツイッターにつぶやいたところ、「ドーナツ屋さ
んの宣伝のうまさに負けてお客さんを取られた、ケー
キ屋さんの気持ちを察すると、後味のよくないつぶや
きだ」と、フォロワーの方に叱られました。
なるほど、そういう心遣いも必要だなと反省しまし
たが、人気のスイーツと言えば、最近表参道にも、ア
メリカから進出したアイスクリーム屋さんが店開きを
して、道路には連日長い列ができています。
正直なところ、このドーナツもアイスクリームも、
自分の舌では、他の店のものとの差をさほどは感じら
れませんので、やはり、見せ方や売り方の差が、商品
の差別化につながる鍵なのだなと、あらためて感じさ
せられました。
と同時に、見せ方や売り方が差別化のポイントとい
う点は、すべての分野に共通する、時代を映すかがみ
のようにも思えてきました。
例のドーナツ屋さんのある、有楽町のイトシアは、
江戸時代には大岡越前が活躍をした、南町奉行所の跡
だそうですが、時代を映すかがみとも言える、ドーナ
ツとケーキの争いに、判官様なら、どんな大岡裁きを
下すかと想像してみました。
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