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2012/05/21

江戸の空中散歩

 東京スカイツリーの、オープニングの 式典が開かれ
た日の午後、招待状をいただいたため、皆さんより一
足早く、展望台に上がらせてもらいました。

 当然、数多くの招待客でごった返しているものと思
ったのですが、案に相違して展望台はがらすきの状態
で、ほとんどわが夫婦だけで、景色を二人占めといっ
た感じです。

 その場で一つ感心したのは、そこに飾ってあった江
戸時代の屏風絵で、浅草寺や不忍池から江戸城の方向
を、ちょうどスカイツリーのあるあたりの、高台から
見たような鳥瞰図で描いています。

 しかし、当時このあたりには、そんな高台はありま
せんから、作者の絵師が、江戸の地図を基に、想像で
描いた鳥瞰図なのですが、こうしてスカイツリーから
見ると、展望台からの景色とほぼ同じで、大した想像
力だと感心させられました。
 
 この後、上の展望台にも上がりましたが、テレビの
画面で何度か目にして見慣れていることに加えて、視
界が広過ぎて現実感が弱くなるのか、今一つ強いイン
パクトが伝わってきません。

 といって、ご招待をいただきながら、けちをつけて
はいけませんが、僕のように子供の頃、東京タワーが
立ち上がって行くのを、日々下から見上げていた世代
にとっては、完成した東京タワーに、初めて上がった
時に見た東京の光景は衝撃的なものでした。

 また、それから数十年たって、六本木ヒルズが出来
た時に、その展望台から、あの東京タワーが眼下に見
える景色を目の当たりにしたのも、かなりのカルチャ
ーショックでした。

 それに比べると、スカイツリーからの光景は確かに
すごいのですが、逆に、様々な技術の発展が、かつて
は当たり前でなかった光景を、当たり前のものにして
しまうかのような、不思議さも感じました。

 この後、展望台の少し下にある、真下が透けて見え
る、高所恐怖症の人には難敵の、話題の場所に行って
みました。

 高い所に余り強くない妻は、ヒャーとかキャーとか
言って楽しんでいましたが、後になって、透き通った
面に張られていた、強化ガラスかアクリルかの板の枚
数は12枚だったなんて言っていて、女性は、キャー
キャー言っていても、結構冷静な一面があるんだと、
これまた感心させられました。

 それはともかく、その透けた場所は二面だけですの
で、一般公開でお客様が来られたら、かなり押すな押
すなになりそうです。
 
 それで思い出したのは、初めてパンダが上野の動物
園に来た時の事で、あまりに入場者が多かったため、
パンダの小屋の前に、立ち止まって見ることが出来ま
せんでした。

 あの時と同じで、「立ち止まらないで下さい」なん
てことになって、ゆっくりと下を見て恐がる暇がなく
なると、お客さんのフラストレーションがたまりそう
だなと、他人事ながら心配してしまいました。

 それにしても、これだけのものを建てる、とび職の
技もすごいし、こんな高台がなくても、高い場所から
見た気分になって、隅田川から江戸城までの鳥瞰図を
描いてしまう絵師の想像力もすごいと、日本の職人の
腕の確かさを、十分に味わった空中散歩でした。

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