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2012/07/31

絆なんてどこにあるの

 宮城県の石巻市で被災したご夫妻の講演を、東京で
聞く機会がありました。

 お二人が暮らしていた地区は、長面(ながつら)と
いって、合併によって石巻市に統合された、北上川の
河口にあたる地域です。

 津波で多くのお子さんが亡くなった、大川小学校の
校区内で、大川小学校も、避難場所に指定されていま
したが、ご夫妻は、そこまで逃げる時間がなかったた
め、裏山に駆け上がって難を逃れました。

 しかし、長面地区は、地震で地盤が1.5メートル
沈下した結果、道路も住宅も、海に飲み込まれる形に
なりました。

 このため、ご夫妻は、「海に沈んだ故郷」というタ
イトルで、その体験を綴った本を出版しましたが、そ
れを機会にこのほど、初めての講演会を東京で開かれ
ました。

 その中で、元小学校の教員だった奥さまは、避難し
た時の体験談を語って下さいましたが、幸いだったこ
ととして、三つの点を挙げられていました。

 その一つは、地震の直後に、ご主人が家に戻ってき
て、「逃げるぞ」と声をかけてくれたことで、その時
奥様は、パニック状態になっていて、逃げることさえ
忘れていたと言います。

 ただ、同じ地区でも、家族のことを心配して家に戻
ったために、津波に巻き込まれた人が何人もいたこと
から、大地震の時には、家族は無事だと信じて、一目
散に津波から逃げないといけないという原則を、あら
ためて強調されていました。

 また、逃げる前に時間がなかったため、指定された
避難場所ではなく、裏の山に駆け上って、津波から逃
れることが出来ました。

 自治体が指定している避難場所は、住民がまとまっ
て避難することを想定しているため、距離や高さに問
題のあることが考えられるため、時間がなくてもすぐ
に逃げられる高台を、想定しておく必要があるという
のが、もう一つの教訓でした。

 ご夫妻は、そのまま山の中で、二晩を過ごすことに
なりましたが、たまたまライターを持っている人がい
たため、木切れを集めて、たき火で暖を取ることが出
来ました。

 考えてみれば、3月半ばの東北ですから、寒さは大
変厳しかったはずで、たき火にあたっていても、歯の
根が合わなくなるほど、震えが止まらなかったそうで
す。

 東京でも、直下型地震の発生が心配されている時だ
けに、お二人の体験談は大いに参考になりましたが、
それ以上に、心に残った言葉があります。

 それは、奥さまが言われた、「絆なんてどこにある
の」という言葉でした。

 というのも、長面地区は、地盤沈下で地域全体が水
没をして、トラックが中に入れない状態が続いている
ため、壊れた住宅などの後片付けにも、全く手がつい
ていないのだそうです。

 このため、震災から一年以上もたってなお、復興ど
ころか、復旧への手がかりもつかめていない現状を見
て、地区の方からは、「絆なんてどこにあるの」とい
う言葉が、しばしば聞かれるようになったということ
でした。

 まだそんな地区があるのかというのが、正直な感想
でしたが、「絆なんてどこにあるの」という言葉は、
実に重い言葉でした。

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