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2012/09/05

彼らの見ている前で

 毎年、陸上自衛隊の東富士演習場で行われる、総合
火力演習を見る機会に恵まれました。

 一般公開で行われる日曜日の演習は、抽選の倍率が
十倍以上という人気ですが、その前日にも、全国の陸
上自衛隊員や、海外からの駐在武官を対象に、同じ内
容の演習が行われます。

 縁あって、その土曜日の演習を見せていただくこと
になったため、前夜から御殿場市に泊まりました。

 その晩は、お世話をいただいた自衛隊の方々と会食
をしましたが、これまで知らなかった話を、あれこれ
と教えてもらいました。

 例えば、戦闘の際に使う迷彩服は、耐火や防水など
特殊な加工が施されているため、結構重たいのだそう
です。

 どのくらい重たいのかと尋ねると、奥さんに洗濯を
頼んだ時に、「こんなに重いものを着てるの」と奥さ
まが驚いたくらい重たい、という答えが返ってきまし
た。

 また、迷彩服は、赤外線に反応しないようになって
いるため、赤外線のセンサーで人の動きを感知する、
男性用のトイレでは、用を足した後にも水が流れない
のだそうです。

 考えてみれば、赤外線のセンサーに引っかかるよう
では、敵に居所をつかまれてしまいますよね。

 一方、20年余り戦車に乗っていたという方のお話
では、これまでの旧式の戦車は、冷暖房などおかまい
なしのため、冬は外気より寒く、夏は外気より暑いと
いった状態で、真夏には車内は40度に達すると言い
ます。

 これが、通称「ヒトマル」とか「イチマル」と呼ば
れる、2010年式の最新型の戦車になると、さすが
に冷房が入るそうですが、それも、車内のコンピュー
ターの機材を冷やすためで、決して人のためではない
というのが、いかにも自衛隊らしい話でした。

 一夜明けた土曜日は、一年に何日もないくらいの晴
天で、眼前に広がる富士山の姿も、ひときわ間近に感
じられます。

 その中でのハイライトは、別々の方角から時間差で
発射した砲弾を、正面の席から見て富士山の形になる
ように、空中で同時に破裂させるという演習です。

 この日は、見事に成功しましたが、狙った場所で同
時に破裂させるためには、距離や角度、風速はもちろ
んのこと、地球の自転の影響などを補正する、ソフト
も使うということで、かなりの技量が求められること
は言うまでもありません。

 演習で使われたものの中には、一発6千万円という
高価なものもありましたので、それだけのお金をかけ
る意味があるのかと、皮肉る向きもあるでしょうが、
演習の大きな目的の一つは、海外からの駐在武官に、
日本の軍事能力を見せつけることにあると言います。

 演習を見た海外の軍人に、こんなに高い攻撃力を持
っているのなら、容易に手は出せないと思わせること
が、抑止力につながるというわけです。

 特に、この日の演習の締めくくりには、日本の離島
に外国が侵攻したとの想定もあって、日本海や東シナ
海に浮かぶ島の周辺がかまびすしい中で、実に意味深
長な演習でした。

 海外の武官の中には、中国や韓国の軍人もいました
ので、彼らがどう受けとめたのか、尋ねてみたい気に
なります。

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