弱みにつけ込むのか
高い濃度の放射性セシウムに汚染された、廃棄物の
最終処分場をめぐる報道を見ていて、国の対応は相変
わらずだなあと感じたことがありました。
原発事故で汚染した高い濃度の廃棄物は、各県ごと
に処分場を設けて処理することになっていますが、国
は、このうち栃木県分の最終処分場の予定地を、矢板
市内に決めて、9月初めに、環境副大臣が現地を訪れ
てそのことを伝えました。
実は、数か月前に、この矢板市に行ったことがある
のですが、それは、市内にあるシャープの工場の、労
働組合が主催した講演会でした。
その時にも、グローバル化が引き起こしている、製
造業の危機についてお話ししましたが、その後シャー
プでは、その危機が日に日に現実化していきました。
そんな中、8月2日にシャープは、栃木工場の規模
を大幅に縮小して、1500人の希望退職を募ること
を発表しました。
もともと、リーマンショック以前と比べますと、シ
ャープの工場からの法人税収入は、限りなくゼロに近
いくらい激減していますが、多くの社員が市内に暮ら
していることを考えますと、今後の住民税の減少も大
幅なものになると予想されます。
さらに、関連の企業や、地域のサービス産業への影
響を考えれば、その打撃は計り知れません。
その矢板市に、原発事故で生じた、指定廃棄物の最
終処分場の話が持ち込まれたのは、シャープの発表か
ら一ヶ月後の、9月3日のことでした。
あまりものタイミングの良さに、政府の思惑が透け
て見えるように感じましたが、納得のいかないことが
いくつかあります。
とはいえ、いずれどこかに、この処分場を作らない
といけないことは間違いありませんので、矢板市の土
地が本当に敵地なのであれば、そのことに異論を差し
挟むものではありません。
ただその時も、国として、一日も早く最終処分場を
設ける必要があると考えるのなら、地元の同意など抜
きに、断固やり抜く意志を示すことも責任ある態度の
一つです。
一方、地元の同意を取り付けてからという考え方な
らば、地元が受け入れやすい環境づくりや、話の進め
方が必要で、そうでなければ、必要な施設の整備が、
結果的に遅れることになります。
間違いなく国は、シャープの栃木工場の、大幅縮小
という厳しい現実の中で、地元自治体も、最終的には
受けてくれると踏んだでしょうし、そのことが、「適
地」と判断されたことの要素にも含まれていたと思い
ます。
ただ、沖縄の基地問題も同じですが、国にとって必
要な施設を地方に受けてもらうにあたっては、弱みに
付け込んで話を持ちかけた上、交付金という札束で頬
を叩くといった手法ではなく、地域の思いをくみ取り
ながら話を進める、合意形成の手法が必要です。
民主党による政権交代にあたって、多くの人は、こ
うした変化を期待したのではないかと思いますが、こ
の矢板市をめぐるニュースを見ていて、またまた裏切
られた思いがしました。
国の責任で断固進めるのか、それとも、地域との合
意形成を図るのか、後者であれば、どういう手法をと
っていくのか、新しい道筋が考えられて、しかるべき
時だと思います。
| 固定リンク
« 人質の扱い方 | トップページ | ワシントンかあ~ »